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徹底解説 将棋と違う囲碁女流棋士の昇段の仕組み
【2019年4月27日(土) 神戸新聞
 小学5年生の少女、仲邑菫(なかむらすみれ)さん(10)=大阪市=が今月、史上最年少の囲碁のプロ棋士(初段)としてデビューしました。今年誕生した女流棋士は、菫さんを含め過去最多の8人に上ります。囲碁界における女性のプロ入りや昇段の仕組みはどうなっているのでしょうか。将棋界との違いはどんなところにあるのでしょうか。(金井恒幸)

 −囲碁界で女性がプロ入りするには。

 「プロ組織には日本棋院(東京)と関西棋院(大阪)があり、それぞれで仕組みが違うんだ。菫さんが所属する日本棋院には、男女関係なくプロ入りの座を争う『正棋士枠』(年間5人)と、女性のみで競う『女流特別採用棋士の採用枠』(同1人)がある。ただ2005年以降、女性は『女流特別−』による採用のみだったよ」

 −18年度にはそこに新たな制度が加わったと聞いたよ。

 「そうなんだ。国際棋戦で中国・韓国に押されている現状を打破しようと、男女関係なく逸材を小学生から育てようと『英才特別採用推薦棋士』が創設され、菫さんはその第1号。女流棋士の採用枠を緩和する目的で新たに『女流特別採用推薦棋士』の制度もつくられた。その結果、4月に88人もの女性が一斉にプロ入りしたんだ」

 −一方の関西棋院は?

 「こちらでは、プロ予備軍といえる院生時代の成績が男性よりも緩和された条件でプロ入りできる制度がある。18年度の採用はゼロだけど、10〜17年度は1〜2人で推移してきたよ」

 −女流棋士の現状は?

 「4月1日現在、2団体合わせてプロ棋士は488人で、うち女流棋士は97人。最高位の九段はいないが、八段は計4人いる。昇段は男女同じ条件で、棋戦も一部の女流枠を除いて大半は同じ扱い。ただ、女性のみ出場できる女流棋戦もあるんだ」

 −将棋界にも女流棋士がいる。

 「将棋でプロと呼ばれるのは四段以上の棋士で、現在、女性はいない。棋界の女流棋士はプロとは別で、段位認定も異なり『女流○段(級)』としプロと区別しているよ。女流棋士だけによる女流棋戦で戦うが、多くのプロ棋戦に設けられている『女流棋士枠』で出場することもあるね」

 −囲碁と女性のかかわりは深い?

 「平安時代には囲碁は宮廷の女性のたしなみとされ、古典文学にも碁を打つ女性が描写されている。鎌倉時代以降、武士の間に広まり、男性が楽しむ傾向が強まった。1952年に初の女流タイトル戦が創設されてからは女性の活躍が本格化し、女流棋戦も増加傾向にあるんだ」

 「普及活動の面では、男性だけでなく女性もいる方が、一般女性が参加しやすい面もあるよね」

 −仲邑さんに対する期待は大きい。

 「デビュー戦に100人以上の報道陣が詰めかけるなど、囲碁界としては異例の話題となっている。中学生プロ棋士としてデビューした藤井聡太七段の登場で将棋の人気が高まったことをほうふつとさせる。男女が対等な条件で戦う囲碁で女性の優勝が実現するか、注目していきたいね」
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