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囲碁や将棋、学校の授業で学ぶ
【2018年10月9日 日本経済新聞】

小学校を中心に、囲碁や将棋を授業に取り入れる動きが出てきた。礼儀が身につくのに加え、子供の集中力や想像力、自分で考える力を養う訓練になると期待を集めている。井山裕太六冠や藤井聡太七段らの活躍も広がる一助になっているようだ。

月島第二小学校では4〜6年生が囲碁の授業を受ける(東京都中央区)
9月中旬、東京都中央区の区立月島第二小学校。4年生の教室では、囲碁の授業が開かれていた。「囲碁は自分で考えて、決める力を養います」。囲碁棋士の桑原陽子六段の説明に、約30人の児童らは興味津々。2人一組での実戦では「うーん、どうしよう」「やったー、勝った」とにぎやか。「囲碁って難しいゲームと思っていたけど、簡単だった。家でもやりたい」(女子児童)と好評だった。同校は2014年から総合学習の授業に囲碁を取り入れている。4〜6年生は年に4〜6回ずつ、囲碁を学ぶ。指導するのはプロの棋士たち。自身も囲碁をたしなむ鈴木政博校長は「囲碁は全て自分の責任で勝ち負けが決まり、相手に対する礼儀や思いやりが育まれる。人生の楽しみも広がる」と導入の理由を語る。学校や囲碁教室での指導が多い桑原六段は「数字を数えるのが好きになる、集中力がつくなど、変化が目に見えて分かる」と話す。日本棋院は15年、「がっこう囲碁普及基金」を設立、学校での囲碁授業に力を入れる。棋士を講師として派遣、入門用の資料や道具も用意する。「囲碁の碁盤は広く、全体を見通す力や集中力、先を読む力などが養われる」と一宮正人・普及事業部長は話す。東北大学の川島隆太教授の研究で、囲碁教室に通う子供らの短期記憶力などが高まることが分かった。囲碁を授業や課外活動で採用する小中高校は全国で300を超える。「教育的効果が知られ、ここ2、3年問い合わせが増えている」(一宮部長)。井山裕太六冠の国民栄誉賞受賞や囲碁AIといった話題も注目を集める一因とみる。

将棋を取り入れる学校も増えてきた。東京都渋谷区の区立千駄谷小学校は16年に将棋の授業を開始。20年の東京五輪に向けて自国文化を知る教育の一環として、小学校1年から年に数回学ぶ。「将棋は礼に始まり、礼に終わる伝統文化。国際化の時代こそ日本の文化を学ぶのは大事」と長田真理子校長は強調する。同小で指導する田中寅彦九段は「将棋は相手の立場で考える訓練になる。奥が深いゲームを児童らが世界に発信してくれれば」と期待を寄せる。相手の手を予測して作戦を練る力や図形を認識する力もつくという。同小に通う1年生の児童は「ピンチでも、一生懸命やっていると勝てることがあってうれしい」。保護者は「将棋は必ず勝ち負けが決まる。最後までやりきることを学んでほしい」と話す。日本将棋連盟も学校への普及に熱心だ。東京では小学校から大学まで145校に棋士や指導員を派遣。「将棋は難しいととらえられがちだが、色々な形で教育に活用できる」と学校教育課の小田切優子氏は説明する。8月には東京工業大学の主催で、プログラミング学習に将棋を取り入れた講習会を小学生向けに開いた。東京都大田区の区立清水窪小学校の児童らが将棋の基礎を学び、コンピューター将棋のプログラム作りを体験。将棋を指導した勝又清和六段はコンピューター将棋にも詳しく「序盤の駒組みをどうするか、全体をどう組み立てるかといった将棋の構想力はプログラミングにも生きるはず」と話す。将棋は藤井聡太七段の活躍もあり、子供や保護者、教育関係者の関心が高い。室内で遊べるため、外に出られない学童保育の活動にも適している。勝又六段は「必修にすると、将棋を嫌いになる子も出るかも」と懸念しつつ、「選択科目やクラブ活動などで子供が楽しむ機会を増やしてほしい」と話す。(関優子)

古作登・大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員(『週刊将棋』元編集長)の話

 将棋が脳の発達につながるかどうかは実証されていないが、論理的思考に役立つことは多くの人が実感しているだろう。囲碁は大学でも取り入れられ、将棋は中国・上海の小学校でも盛ん。教育関係者が手応えを感じていることの反映だと思う。囲碁や将棋はコミュニケーションにも役に立つ。囲碁の用語では「言葉を交わさなくとも対局で心を通わせる」ことを「手談」と呼ぶ。将棋もチェスも同じ。一度対局すれば、長年の知り合いだったかのように打ち解けることがある。体力を問わず楽しめるので、生涯続けられる利点もある。課題は指導者不足。棋士を派遣するにも数に限りがある。ボランティアが教えている例も多い。指導には初段レベルが必要。初心者や子供が嫌いにならないような、相手の能力に応じたアプローチが大事だ。指導者を育てる仕組みが求められている。
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