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大沢健朗「大場を打つときは盤面全体を見て」
【2016年1月5日、1月12日、1月19日、1月26日 読売新聞「上達への指南」】

 日本棋院中部総本部の下島陽平八段、柳沢理志四段らと、若者への普及のため「名古屋アミーゴ」の活動を始めて6年になります。囲碁をまったく知らなくとも、失敗を恐れず、ワイワイにぎやかに碁盤を囲んでくれるので、私も楽しみながらやっています。彼らには「早くシングル級になりましょう」と言っています。1ケタ級になると、碁の面白さを実感できるようになってくるものです。

テーマ図1図(正解1)2図(正解2)


 【テーマ図】 序盤は盤全体を見てどう陣地を構えるかを決めます。黒1、3、5の三連星は、定石の数が限られていて、2ケタ級の黒の方にお勧めです。白6のカカリには黒7とハサミます。黒1、3、5の三連星を固めるためです。ハサまれると白は白8と三々に入るのが普通です。ここで黒はイとロのどちらに打ちますか。黒がどう陣地を構えるかが決まります。

 【1図】 実は、級位者にはどちらも正解です。ふつう、狭い方を黒1と押さえるのはよくないとされていますが、それは段位者の話。級位者はどちらに打っても問題ありません。大事なことは黒1をどう生かすかです。黒1と打ったなら、黒は上辺を大切にします。白8に続いて、黒9のカカリから11と飛んで、上辺に陣地を構える意思が明確なら黒1は正解です。黒9でAなどと右辺を打つと、白9に守られ、上辺の黒模様が消されて不正解になるのです。

 【2図】 もちろん、黒1の押さえも正解です。これは黒が右辺を大事にするという意志です。白2に黒3と伸び、黒5のケイマまで右辺一帯に黒が陣地を構えれば、構想は一貫しています。白6に黒7と受け、白8の大場なら、黒も左辺の大場に黒9と打ちます。左辺にワリウチすれば白が左辺に係ってくれば右辺の黒が強くなるので、黒は申し分ない布石です。



 序盤の布石の段階では、部分にこだわらず盤面全体を見る習慣をつけたいものです。盤全体を見ていると大場が見えてきます。大場を見分けるひとつの目安として、「双方の石の間隔が長い所」と覚えてください。

テーマ図1図(失敗図)2図(正解図)


 【テーマ図】 白10に構えて白が右辺の大場に打ちました。ならば黒も黒11と下辺の大場に展開します。ごく普通の布石です。ここで白が白12と三々に入ってきました。嫌なものです。黒17まで黒が上辺を大切にすれば、白18のツギの後の一手が肝要です。

 【1図】 2ケタ級の人が打ってしまいがちなのが、黒1のツギです。有段者から見れば、「それはない」となりますが、私の経験ではよく見かけます。この心理状態は分かります。三々に入って来られ、対応している間に、この隅だけに神経が集中し、碁盤全体を見る余裕がなくなるのです。しかし白は黒1を無視して白2と大場を打って、黒3の上辺なら白4の下辺への攻めとなります。黒は後れをとったのは明らかでしょう。

 【2図】 ひとまず右上隅から目を離して、盤面全体を見ることです。まだ盤全体は決まっていません。陣地を決める大場がたくさんあります。双方の石の間隔を見てみましょう。左辺は△と▲の距離は9間あり、ここが最大の大場です。となれば黒1のあたりが文句のない大場になります。黒1に打てば、白2と攻められても左下の黒一団はびくともしない。ならば黒は黒3と左上の白を攻めることができる。これは黒満点の布石です。黒1に対し白A、黒B、白Cと1子を取りに来ても、小さいので黒1子はあげましょう。ということは黒から黒Aとつぐ手も考えられないということです。



 「2目の頭、見ずはねよ」と格言は「相手より一歩先へ伸びよう」という意味です。2目でも3目でも頭をはねられると、相手が一歩先にノビるのでつらいことになります。これを回避するために私が皆さんに言っているのは「相手より一歩先へ伸びよう」ということです。

テーマ図1図(正解図)2図(失敗図1)3図(失敗図2の1)4図(失敗図2の2)


 【テーマ図】 白6の二間高ガカリに黒7とはさみました。白は白8のツケ。これも定石のひとつです。黒9以下は級位者には少々難しい変化かもしれません。白14とはねられたところで、黒はどう打ちますか。

 【1図】 ここは2ケタ級の方でも黒1と伸びるでしょう。しかし、白2の押しにじっと黒3に伸び、白4にも黒5と辛抱していられるか、です。黒は下辺に自然と確定地が得られ、白Aのハサミには黒Bと応じて、黒は実は文句がないのです。黒が一歩先に伸びているからです。反面、白は車の後押しになっているので白つらい。そこに気づいてほしいのです。

 【2図】 △のハネに手を抜いて右辺に黒1と打つと、白2に当てられ、黒がつらいのはお分かりでしょう。白4と封鎖されてはたまりません。

 【3図】 △に黒1の伸びは当然として、白2の押しに手を抜いて右辺に黒3と打つ人が意外と多い。右辺が心配で黒3の守りを急ぐのですが、これも下辺は一歩先に打っていないので白4、6とたたかれ、ひどい姿です。

 【4図】 一歩先に出ず黒1とハネるのも、白2のハネ一本を打ってから白4と切られ、黒5と当てると白6とノビられて、以下白12でツブレ。1図のように辛抱強く一歩先へ伸びているのが肝要なのです。



 石が死ぬのは誰でも嫌なものです。しかし級位者はこの意識が特に強く、序盤から必要以上に眼の心配をしがちです。私は「二眼を作るのは最後の手段です」と教えています。

テーマ図1図(失敗図2の1)2図(失敗図2の2)3図(失敗図を打ってしまっ
たときの正しい打ち方)
4図(正解図)


 【テーマ図】 黒、白ともに三連星の布石です。黒9のカカリに白は白6を打ってあるので白10のコスミツケ。黒13にも白14の鉄柱は実戦にも出てきそうです。ここで黒はどう考えたらよいでしょうか。中で生きるか、中央に出るか。

 【1図】 2ケタ級の人によく見られるのが、黒1のコスミから3、5のハネカケツギです。中で生きようというのです。早く二眼を確保して、死ぬのは避けたいとの考えでしょう。気持ちは分かりますが、序盤から小さく生きる(=卑屈になる)ようでは勝てません。

 【2図】 たとえば白1と襲いかかられると、黒2と眼を持ってほっとします。ところが白3と封じ込められては、早くも敗勢です。

 【3図】 せめて2図の黒2では、黒1、3と反撃すべきです。白4の引きに黒5以下11とすれば、黒AとBが見合いで、これは白破綻の図です。しかし、このような元気があるなら、1図のような打ち方はしないでしょうね。

 【4図】 さて、結論です。二眼を作るのは最終手段。中で生きるよりは中央に出ようで、黒1、3と中央に進出して行くべきです。黒5と左辺の白陣を割っておけば、黒5で中央に出ているので当面、自分の眼の心配はせずに、逆に黒Aなど逆襲の可能性さえ出てきます。

(おわり)


●メモ● 大沢二段は昨年10月行われた日本棋院中部総本部囲碁フェスタ2015で「24時間耐久 9路盤 1000局」に挑戦。29時間余りで目標を達成した。対局した相手は延べ約500人という。「囲碁を知らない人にも興味を持ってもらえるよう、今後も様々な企画を考えていきたい」。大沢二段が代表を務める「名古屋アミーゴ」は、月1回のペースで初級者向けのワークショップを開催している。参加者があきないよう、毎回、関心を引く企画を考えている。「最近はコミュニケーションの一環として、囲碁を楽しむ同世代が増えていると実感しています」。大沢二段は一昨年5月に結婚した。奥さんに囲碁を教えたいと思っているが、覚えようとはしないのだという。理由は「囲碁を知ってしまうと、プロ棋士のすごさが分かってしまうから――」とのこと。「妻に囲碁を教えないことが、夫婦円満のカギなのかもしれません」。大沢二段は、お酒を飲みながらおいしい物を食べるのが何よりも好き。地方へ出かける機会があると、一人で居酒屋に入り、地元の名物を探す。これが楽しい。ついつい時間も忘れてしまう。洋服や時計、車などにはあまり興味がない。「1万円の服と食事なら、迷わず食事を取ります」。
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