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阪本寧生五段「3子局は序盤で反発しろ」
【2016年2月2日、2月9日、2月16日、2月23日 読売新聞「上達への指南」】

 プロの高段者に3子で勝てるようになれば、2子でもすぐに善戦できるはずです。アマの県代表クラスの実力はあるといってよいでしょう。しかし、3子の置き碁はそうやさしくはありません。序盤から白(プロ)の言い分を通していると、すぐに細かい形勢に導かれます。後は実力の差で、黒(アマ)は終盤に抜き去られることが多いのです。3子局は黒(アマ)は石数優位の序盤に強く戦うことが大切です。私の指導碁を題材に解説したいと思います。反発する気力と棋力を養ってください。

テーマ図正解図参考図実戦図


 【テーマ図】 「序盤に反発」と唱えましょう。白1に黒2から黒6までまず右下を攻めます。続いて白が白7と左下黒へのカカリと右下黒一団へのハサミを打ってくれば、黒8と反発。以下黒14までは必然でしょう。ここで白15の切りは左下の白4子のサバキを図りながら、下辺の黒を凝り形にさせようという手です。黒はどう対応すべきでしょう。

 【正解図】 左下白一団と右下隅の白一団を分断すべく、黒1と上に伸びるのが強い手です。白は左下白一団を守るべく白2と飛ぶしかなく、黒は黒3と下から当てることができます。白4に黒5とはって、下辺の白2子は動けません。次に白Aなら黒B、白C、黒Dで取れています。

 【参考図】 この後、白は白1と三々に入りますが、黒4と強く遮ります。白9に黒10とユルめるくらいでも、黒には黒Aの突き当たりから左右を連絡する保険があり、心配はありません。逆に左下隅の白5子は非常に薄い姿です。

 【実戦図】 黒1と反発したくなりますが、黒1の当ては白の注文にはまりました。白8まで絞られて左下白一団が安定した上に、白10三々から白12に、白は左下白一団が強くなっているので黒は黒13と左辺を押さえるしかなく、左辺黒17のヒラキに右辺白18と開かれては、黒は相当やられています。



 解説用の盤面が、3子局としては上下反転しているのではと違和感をお持ちの方がいるかと思います。これは私が手前に座り、皆さんを相手にしていることを想定しているからです。ご了解いただければ幸いです。さて、互い先でも置き碁でも、基本は戦いにあります。戦いを避けて通ることはできません。戦わずして勝てるのなら、それは手合違いというものです。

テーマ図正解図失敗図実戦図


 【テーマ図】 「序盤に反発」と唱えましょう。白1に黒2から黒8までまず右下を攻めます。続いて白は左下への攻め。白9と左下の黒にカカリなれば、黒10とハサミます。黒は常に盤面を狭くして反発するのです。以下黒18までは必然でしょう。白は白19と左上への攻め。これにも黒20とハサミます。以下白29まで必然です。先手の黒は黒30と右上隅をカマエます。白は白31から37まで上辺を分断しました。黒は白37に反応することなく、黒38と右下から下辺を広げます。右下から順に、左下、左上、上辺と4か所で定石のような形ができました。黒はそつなく打っています。ここで私は白39と下辺に単騎突入して下辺の消しに向かいました。深入りのようでも、ここまで踏み込まないことには黒模様が大きく勝負になりません。黒はどう応じるべきでしょうか。

 【正解図】 「深い」とみて黒1のボウシが強い攻めの手です。白2のツケなら、黒3の伸びから5、7と押さえ、11まで強く封鎖します。白12から14と白は急所に守り、一応は生き形ですが、次に黒Aのツギでも黒は十分です。下辺中央の黒一団が厚くなると、上辺の白4子の薄みが目立ってきます。その上、左下隅の白一団にも利きがあって、黒に楽しみの多い形勢です。

 【失敗図】 下から黒1の囲いはいけません。白2から6とくつろげられて白の理想型になりました。左下のスソもあいていて、黒は大甘です。

 【実戦図】 下から黒1は白2、4とツケ伸びられてさっぱりでした。白10まで白に下辺でふんぞり返えられては、黒の容易に勝てない碁になっています。



 3子の置き碁の場合、私は初手はほとんど小目と決めています。これに対して黒は一間高ガカリが圧倒的に多い。小ゲイマにかかる人はあまりいません。小ゲイマですと、白に色々なハサミ方があり、変化が多くて複雑なため敬遠されるのでしょうか。しかし、私には物足りない気がします。県代表クラスを目指すなら、小ゲイマガカリをしっかりと使いこなせるようにならなければなりません。

テーマ図変化図1変化図2実戦図


 【テーマ図】 「序盤に反発」と唱えましょう。黒8は狭く、イの三間が普通です。黒14と右下の白一団を攻めてきましたが、白は無視して白15。黒16と左下隅を守ったので白17と黒10の肩をつき、黒18に白19と頑張りました。白19で白ロのトビなら白堅いのですが、迫力がありません。黒はどう打ちますか。

 【変化図1】 黒1、3と力強く「出切り」たいところです。白4のトビには黒5のノビです。白6のコスミツケから8のオシは白にはつらい脱出です。黒11に白12の受けはやむを得ず、黒13と押されては白が相当苦しい形でしょう。

 【変化図2】 そこで、白1の当てから3のカケツギも考えられます。黒4から6とケイマされ、白が相当苦しいことに変わりはありませんが、変化図1よりは眼形を作りやすいかもしれません。いずれにしても、このように攻めの効果があるのは、「出切り」が正しかったことの証明です。

 【実戦図】 下から黒1の曲がりは弱気すぎました。白2の飛びに黒3と伸び、白4に黒5と渡ったため、白6と左辺上の好点に回られては、すでに碁にされています。



 白が初手を隅に打った時、かからずに大場に先着する方も結構います。どんどん足早に先行して大模様作戦をねらうのですが、これもやはり、私は積極的に推奨する気にはなれません。戦いの力がつきにくいと思うからです。

テーマ図正解図参考図実戦図


 【テーマ図】 「序盤に反発」と唱えましょう。白1に黒2と星に先行し、左下星・白3に黒4と受け。白の白5シマリに黒が黒6と右下カタに打ちました。珍しい打ち方ですが、黒10まで、黒は中央の模様を意識しています。白は黒10を無視して、反対の右上星に白11とカカリ。中央を意識する黒が黒12の広いハサミなら白13と三々入りで白は実利志向。以下黒24まで黒はあくまで中央志向。白は黒24を無視して、左上星に白25とカカリ。すると黒は黒26と今度は狭いハサミ。黒は中央を囲います。ならば白は白27と立って黒を分断して、黒28と受けさせる。いよいよ白は反撃です。白は白29のカケて黒の中央を荒らします。黒はどう動きますか。

 【正解図】 黒1、3と「出切る」一手だと思います。白4には黒5の当てから7、9と左辺の黒一団を出ます。白は白10のゲタで黒3を取るでしょうから、黒11と黒は左下隅を押さえます。白は中央を荒らしましたが、黒は模様半分で文句なし、左下隅の地もかなりまとまりそうです。黒が良いでしょう。

 【参考図】 黒の出切りに対して、白1の当てから3と押して上辺を荒らすのが白の常用の手筋ですが、この場合は良くありません。黒4の切りから6、8、10と強引に押さえ込まれて、白11から13と当てても、黒16と伸びられると、白Aのシチョウが悪いので白Aとは打てず、左辺の白4子は取られます。こうなると白のツブレになり、左辺の黒が大きくなってしまいます。

 【実戦図】 実戦は黒1から下に黒3と曲げました。これは黒が悪い。白6に対し、黒11のハイも黒Aのケイマもバランスがよくないので、7、9のワリツギでした。しかし白10とつぐ手が白には成立し、白14と打っては左辺の外側を白に取られ、黒は左辺に閉じ込められる。これは黒が大悪でしょう。この図は黒30手目で序盤とは言えないかもしれませんが、「序盤で反発」の精神をお忘れなく。3子が2子あるいは4子に変わっても、「序盤で反発」の精神は大事です。
(おわり)



●メモ● 阪本五段は大阪府吹田市出身、38歳。植木善大八段門下。2003年入段、14年五段。同門に武井孝志七段、種村小百合二段。名前は、書道の先生をしていた祖父が中国の漢詩などを調べてつけてくれた。その名前に恥じないよう「何事にも丁寧に」と自分を律しているという。阪本五段は大学囲碁界出身。関西学院大学在学中に全日本学生十傑戦で優勝し、卒業後、プロになった。日本棋院関西総本部所属。昨年の成績は8勝8敗。棋院のネット対局サービス「幽玄の間」では、月に10〜20局の指導碁を打っている。3子局が多いそうだ。阪本五段は、鳥取県湯梨浜町で行われた第40期棋聖戦七番勝負第2局で記録係を務めた。井山裕太棋聖と山下敬吾挑戦者の激闘を目の当たりにし、「対局室は静かなのですが、緊迫感はすごい。着手だけではないぶつかり合いがあり、2人の闘志の熱さを肌で感じました」。阪本五段は、井山裕太棋聖が主宰する「井山研究会」のメンバー。井山棋聖は年齢はひと回り下だが、プロ棋士としては1年先輩になる。研究会にはほかに、村松大樹六段、吉川一二段、小松大樹二段らの顔も。毎週火曜日、日本棋院関西総本部で、それぞれの前週の対局を検討する。
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