トップページ > 記事閲覧
山本賢太郎「自分の弱い石、相手の弱い石、地の大小の順に判断する」
【2016年4月26日、5月10日、5月17日、5月24日 読売新聞「上達への指南」】

 中盤戦でどこに打つのが良いか、皆さんも迷うことが多いと思います。そんな状況で参考にしていただきたい考え方を紹介しましょう。答えは、盤面を見渡し〈1〉自分に弱い石があるかどうかを確認〈2〉相手に弱い石があるかどうかを確認〈3〉地の大小――の順に判断するです。

テーマ図正解図参考図


【テーマ図】 テーマ図は安達三段との一戦。安達三段とは研究会が一緒で、よく打ちます。早見えで、鋭い感覚の持ち主です。黒番です。局面は、碁の骨格ができつつあり、中盤に差しかかろうとしています。しかし、まだ完全な一段落とは言い切れません。白1の消し(右下白スベリ)が浅いか深いかを判断し、対策を立てます。私は「浅い」と判断して無視して、他の所に攻勢に出ました。次の一手を三つのテーマに沿って考えてみましょう。
【正解図】 黒1のケイマがこの一手でした。▲2子は見るからに不安定です。このままでは相手に付け入られてしまいます。なんとかしなければなりません。△3子はとりあえず形になっていますが、万全ではありません。この3子を弱い石にすれば黒が主導権を握ることができます。そしてお互いの地の増減。黒1はすべて(自分の弱い石の補強、相手の弱い石の攻め、地の大小)を満たしているのがお分かりいただけると思います。白2の飛びには黒3で十分。この飛び合いは左辺の白模様を消しており、黒に利があります。
【参考図】 黒1のケイマは部分的には好点です。しかし白2と黒3の交換を許した形がつらすぎます。こうなると白2が三つのテーマに沿った地点へと変わっています。黒1は相手の弱い石を攻めるという視点が欠けていたのでした。



 三つのテーマを確認しておきましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――の順に判断するです。参考までに〈1〉と〈2〉を含んだ手がある場合は〈1〉の方が、〈2〉と〈3〉を含んだ手がある場合は〈2〉の方が価値が高くなります。弱い石は急所になりやすいということです。今回は互い先の碁の分かりやすい局面を題材としていますが、これは2子、3子、さらには9子の置き碁にも同じように通用することです。

テーマ図正解図参考図


【テーマ図】 黒番です。どこへ向かうのが正しいでしょう。直感も大切ですが、対局者となったことを想定し、三つのテーマに沿って考えてみましょう。
【正解図】 黒1のスベリが急所でした。石を置いてみると、この一手という感じがするでしょう。局面を見渡すと、▲2子は最も安定感のない石で、〈1〉のテーマに該当します。黒1によって△2子が弱くなるため、これは〈2〉のテーマとなります。テーマ〈3〉の地の大小も、見た目通り黒の方が大きい。白2の受けには黒3とはい込んで、まだまだ白を脅かすことができます。
【参考図】 黒1の開きは大場に見えますが、相手に強く響くところではありません。〈3〉のテーマの地の大小だけの問題です。白2とこすまれてしまうと、正解図とは立場が逆転。△2子が安定するのに比べ、▲2子は不安定な石になります。三つのテーマの順番は、その局面で正しく打つ地点を指南してくれる考え方といえます。



 今回は少し難度が上がります。テーマを確認しましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――の順に判断するです。

テーマ図正解図参考図


【テーマ図】 黒番です。これまでは三つのテーマがすべて入っている形でしたが、今回はそうとも限りません。図をよく見て、テーマに沿った次の一手を考えてみましょう。
【正解図】 黒1の飛びが正しい感覚です。この手には相手を攻める要素は入っていませんが、この局面で下辺の▲は白に目をつけられるとやっかいな存在となります。つまりテーマ〈1〉自分の弱い石――に該当するのです。白2の詰めもかなりの好点ですが、黒3のカケから9のツギまでとなると、下辺の黒は立派なスケールとなります。つまりテーマ〈3〉地の大小――も満たしているのです。
【参考図1】 それでは黒1の詰めから行くのはどうでしょう。捨てがたい手ではあります。しかし左上の白にはなかなか手出しできません。白2の打ち込みに先着されると、6までの飛び合いは、左辺の形が決まっているため、黒に楽しみのない碁形となってしまいます。テーマから考えると、黒1は〈3〉地の大小――の選択です。白2は〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――に沿っており、白の方がテーマをより踏まえた結果となります。
【参考図2】 黒1の飛びに対し、白2と下辺の盛り上がりをけん制すれば、黒3で十分です。



 最後は基本をもう一度確認しましょう。布石は戦いが少なく広い局面であることから、次の着点に迷うことも多いと思いますが、基本の考え方(〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――の順に判断する)を参考にしていただければ好点を見つけやすくなるはずです。

テーマ図正解図参考図


【テーマ図】 黒番です。盤面全体を見渡して次の一手を考えましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――の順に判断するです。
【正解図】 黒1の詰めが三つの要素をすべて含んだ盤上この一手の急所でした。まず▲3子に注目して下さい。盤上で一番頼りない石と言えます。次に△3子もかなり不安定な石です。そして地の大小です。黒1によって左上の黒地は大きくなり、逆に白地は押し込められ減少しています。白2のコスミツケと黒3を交換して白4と下辺の大場に回れば、黒5の押さえが力強い。次の展開にもつながっていきます。
【参考図】 黒1は見た目大きいが相手を攻めていません。地の大小だけの問題です。急場より大場に打ったことになります。逆に白2と開かれると攻守逆転です。正解図が三つの要素すべてを満たし、十分な形となったことを考えると、自分の好点の周辺が相手にとっても好点ということなのでしょう。つまり〈1〉自分の弱い石――から考え始めるのが順番なのです。基本を押さえ、急場の好点を逃さないようにしましょう。上達への階段を一歩ずつ上がって下さい。(おわり)


●メモ● 山本五段は鳥取県倉吉市出身。35歳。日本棋院関西総本部所属。後藤俊午九段門下。鳥取県で連続開催された今年の棋聖戦七番勝負第2、3局では大盤解説を担当。軽妙な話術でファンをわかせた。7歳年下の夫人との間に3歳の長女がおり、今は広島市内で暮らしている。山本五段は15年前、大阪府枚方市から広島市内に引っ越した。同市在住の地方棋士、山田太喜三八段(故人)の「だれか地元で普及の手伝いをしてくれる棋士はいないでしょうか」との呼びかけに応じた。いまはすっかり広島の地元っ子に。対局の際は大阪に出向く。山本五段の昨年の成績は8勝11敗。「前半はまずまず好調で、年間でも勝ち越したかったのですが――」。今年は4月まで5勝3敗。師匠の後藤俊午九段にはいまでもかわいがってもらっている。「色々な意味で魅力的な先生です。見習おうにも私にはできない魅力です」山本五段は「高尾紳路九段の厚みの碁が好き。あこがれの棋士は加藤正夫先生です」と語る。「手合は全力投球で」が信条。普及は故郷の鳥取や広島など中国地方を中心に活動しているが、「囲碁の裾野を広げるため、地方の重要性をもっと主張していきたい」という。
コメント終了
Page: [1]

題名
会員名
会員ID :
会員パスワード
コメント

   クッキー保存