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16歳・上野愛咲美、世界戦・呉清源杯、天台山杯で旋風
【2018年5月31日 朝日新聞(大出公二)】


研究会で練習対局に打ち込む上野愛咲美女流棋聖。怖いもの知らずの16歳だ=東京・市ケ谷の日本棋院

 中国と韓国がタイトルを独占する囲碁の世界戦で、日本の上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(16)が強豪棋士を次々に倒し、にわかに注目を集め始めた。ふだんは「ヤバい」が口癖の天然キャラ。盤上での強烈な戦闘志向とのギャップに、大物感が漂う。

 上野は今年1月、当時の謝依旻女流棋聖(28)を破ってタイトルを獲得。女流5タイトルを二分する謝と藤沢里菜女流立葵杯(19)の女流2強に割って入り、世界飛躍へのきっかけにもなった。4〜5月に中国で相次いで開催された女流棋戦・呉清源杯、天台山杯に謝、藤沢らとともに日本代表に選出され、ここで大暴れした。4月28日、個人戦の呉清源杯2回戦の相手は中国のゼイ廼偉(ぜいのい)九段(54)。かつて韓国の一般棋戦で女性初のタイトルを獲得したゼイを相手に、大石の攻め合いを一手勝ちで仕留めた。4月30日の準々決勝では女流の世界タイトル獲得の実績を持つ中国の李赫(りかく)五段(26)に逆転負け。しかし5月12日、団体戦の天台山杯で李と再戦し、大乱戦を制した。

図1図2図3

それが図1。白94まで、先番の上野の左辺黒三子はほぼ取られ。浮石の中央の黒もaの断点を抱え、誰の目にも黒劣勢に映った。しかしここから巻き返す。図2白140で要の黒二子を取って上下の白がつながると、上野は黒141と大コウを決行した。盤上三つに分断された▲と、△の一団がまだ生きていない。その生死に直結するコウ争いの結果は図3。黒241まで、コウは黒が勝ち△を手中に。▲は取られたが、差し引き黒の大利で勝負を決めた。「リベンジしたかったけど、まさか勝てるとは。びっくりです」と上野。大舞台でもプレッシャーとは無縁だ。「打つ前から、もう負けてるんだと思って臨みます。なにかの間違いで再試合になって『またチャンスがもらえた』って。勝てば『ラッキー』ってなるじゃないですか」誰にもビビらない勝負度胸も頼もしい。「中国選手は気合で押してくる。でも気合では絶対に負けない」。だから正面衝突のぶつかり合いになる。「戦いが好き。戦いがないと悲しくなる」。世界トップ棋士に臆することなく殴り合いを挑み、ねじ伏せた。

4月2日の世界メジャーLG杯予選にも参加。1回戦で中国の強豪夏晨コン(かしんこん)六段(18)を破り話題をさらった。「迷いなく、ひたすら前へ、気持ちいいくらい好き放題に打つ」と小林覚九段。「ツボに入った強さは世界レベル。非常に魅力的な碁です」次の世界戦は6月5日から始まる中国の女子団体勝ち抜き戦・黄竜士杯最終ステージ。日本勢5人のうちすでに3人敗退し、残るは上野と藤沢。先陣の上野は、これも世界タイトル経験者の韓国・呉侑珍(オユジン)五段(19)と対局する。

■桁外れの集中力、中3でプロ入り
 上野は東京生まれの東京育ち。5歳のときに藤沢一就八段が主宰する「新宿こども囲碁教室」で35級から始めた。「とにかく集中力が桁外れにすごかった」と藤沢八段。才を見込まれ毎日通い、早くから地に目もくれず相手の大石を狙う「殺し屋」ぶりを発揮。短所を潰すのではなく、長所を徹底して伸ばす指導にマッチしてめきめき腕を上げた。小2で日本棋院院生(プロ候補生)になり、中3でプロ入りした。「世界で勝てる棋士」の発掘指導を志し、18年前に教室を開いた師匠の期待は大きい。「天下を取れるかって? 可能性はあるでしょ」
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