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新人囲碁棋士6人、いざ勝負 学業と両立、模索の末・次点で2度涙・期待の13歳
【2018年4月12日 朝日新聞(大出公二)】


プロ入りした(左から)青木裕孝、酒井佑規、村本渉、伊了、長徳徹志、加藤千笑の各新初段

4月、囲碁のプロ棋士団体・日本棋院に、13〜20歳の男女6人のルーキーが加わった。難関のプロ試験突破までには、各人各様の物語がある。真っすぐに突き進んだ者、自分のこれからに悩み苦しんだ者。棋士人生の入り口に立ったいま、何を思うか。

 青木裕孝初段(17)は学業と囲碁修業のはざまで揺れに揺れた。5歳で父に碁を教わり、小学3年で棋士養成に定評のある藤沢一就八段門下に。ところが中3の冬、日本棋院東京本院のプロ候補生「院生」を辞めたのだ。囲碁界では高校に進まず碁に専心する棋士・院生が少なくない。しかし青木さんは進学を重視。週末に棋院に通う院生の活動は進学しても両立できたが、「学校生活を大切にしながらプロをめざそうと思ったんです」と言う。東京本院のプロ試験には院生のみの選抜試験のほか、院生と院生以外の「外来」を合わせた試験がある。青木さんは高1のとき外来で挑んだが、前年より悪い成績で不合格に。「勉強も追いつかず、どっちも中途半端になってしまって」。高2の春、一念発起して学校を休み、囲碁に傾注し、念願を果たした。学業は休学が半年以上に及び進級できず、4月から通信制高校に転学して大学進学をめざす。「進学して、人間としての深みを養っていくことにこだわりがあります。今まで以上にたいへんだと覚悟しています。自分を律してやっていきたい」。囲碁にも野心はある。「いずれはタイトルを取れると思っています」

     ○●○●
 大阪・関西総本部の試験に合格した村本渉(わたる)初段(20)は、小2で院生になった。10年後、院生の在籍期限17歳のとき星一つ差の次点に泣き、院生から外れた。外来で挑んだ一昨年の名古屋・中部総本部の試験では、勝てば1位合格の最終戦で敗れた。ライバルに同星で並ばれ、予選の成績で決まる序列がライバルより下位だったため、またも次点に。昨年、大阪で挑んだ試験も同星首位だったが、今度は相手より序列上位により合格した。「やめようと思ったこともありました。でも僕には碁のほかは考えられない。20歳で棋士になるのは遅いほうですが、年下の強い若手に負けない棋士になりたい」

 女流棋士特別採用試験を11戦全勝で突破した加藤千笑(ちえ)初段(16)は、生まれつき骨が弱い「骨形成不全症」を抱えつつ、8度目の試験挑戦で夢をかなえた。岐阜の自宅に近い名古屋の中部総本部所属のプロをめざしたが、東京、大阪、名古屋の持ち回りで実施する女流試験の今年の会場は大阪の関西総本部。合格しても規定で7年間は関西所属となる。出願前に悩んだが「チャンスを逃したくない」と応募した。「関西のみなさんに温かく迎えてもらいました。早くタイトルを取れる棋士になりたい」
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 富山出身の長徳(ちょうとく)徹志初段(16)は親を説き伏せて中2で中部総本部の院生に。週末にバスで富山〜名古屋を往復して夢をかなえた。東京本院の伊了初段(16)は一力遼八段(20)や芝野虎丸七段(18)を輩出した東京・洪(ホン)道場の出身だ。同じく東京本院の酒井佑規初段(13)は、一力八段以来7年ぶりとなる13歳でのスピード入段。大器とうわさされ、次代の碁界の頂をめざす。

■狭き門、受験は22歳まで
 日本棋院は年6人の棋士を採用している。東京本院は二つの試験で計3人を採用。院生のみによる選抜試験は成績1位の1人だけが合格し、棋院によると、昨年の倍率は58倍。別に設ける院生と外来の合同試験は予選を経て成績上位2人が合格し、昨年の倍率は33.5倍に上った。関西、中部総本部と女流枠からは各1人を選ぶ。囲碁の棋士になる年齢制限は、将棋より厳しい。将棋の奨励会員は原則26歳まで在籍できるが、囲碁の院生は17歳まで。外来として受験できる合同試験も22歳までだ。将来の選択肢として棋士以外の別の道を若いうちに模索させるねらいだが、一方で就学や就職と重なる年代でもある。夢を追うか、あきらめるか。葛藤を抱えながら挑戦している。
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