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独学で人間超えた「アルファ碁ゼロ」の衝撃、一手0.4秒の速さ
【2017年11月9日 朝日新聞(大出公二)】

人の知恵に一切頼らず、ゼロから「独学」してわずか数日で人の到達点を超えた人工知能(AI)が現れた。数年前まで「AIが人を超えるには10年以上かかる」といわれた最強のボードゲーム・囲碁の盤上で起きたパラダイムシフト。開発会社はこの技術を実社会に応用していくという。

グーグル傘下のAI開発会社、英ディープマインド社は10月18日、英科学誌ネイチャーに「人間の知識なしで囲碁を極める」と題した論文を発表した。同社が昨年1月に発表した「アルファ碁」は、同3月に世界ランカーのトップ棋士、韓国の李世石(イセドル)九段を4勝1敗で下した。論文によると、今回新たに開発した「アルファ碁ゼロ」は、その「アルファ碁」に100戦全勝したというのだ。

囲碁は初手から終局まで、着手の選択肢が天文学的な数字に上り、最新のスーパーコンピューターでも最後まで見通せない。駒の動きが決まっている将棋と違って、盤上に配するのは黒と白の石だけ。着手や局面の評価を数値化し、コンピューターに入力するのは不可能とされてきた。これを可能にしたのが李を破った「アルファ碁」だった。ネット上に残る高段者の膨大な棋譜を数百万の局面に分解して画像データとして読み込み、人間の脳の神経網を模したプログラム「ディープラーニング(深層学習)」で分析。どの局面ではどの手が有効なのか、理屈ではなく画像のパターンから認識した。その上で何千万局ものAI同士の対戦を繰り返し、勝敗の結果をフィードバックして着手の精度を高める一方、局面の形勢の優劣を判定する力も得た。

図1図2図3


一方の「ゼロ」は、基本ルールを授けただけで人の棋譜を取り込む手続きを飛ばし、いきなり「ゼロ」同士での対戦に取り組んだ。その進化の軌跡は、まるで生まれたばかりの赤ん坊が、瞬く間に超人に成長するSFの世界を見るようだ。図1は対戦を始めてから3時間の棋譜。ルールを覚えたばかりの子どもがランダムに石を置くレベルだったが、19時間後の図2では、石の死活や石で囲む領土の概念を獲得。70時間後の図3では、すでに人間を超えるレベルに到達した。ここに至るまで一手0.4秒の速さで490万局の自己対戦を繰り返し、初代アルファ碁に100戦全勝。さらに自己対戦が2900万局に達した40日後には、初代の進化版で、昨年末〜今年初めに中国の柯潔(かけつ)九段、日本の井山裕太七冠ら世界トップ棋士に60戦全勝した「マスター」にも、89勝11敗と圧勝した。

■広がる AIの可能性

論文によると、「ゼロ」は従来のアルファ碁で運用していた次の一手を探すネットワークと、形勢を判断するネットワークを一つに統合。より確かな解を導き出せるよう新たなアルゴリズム(情報処理の手順)を導入し、急激な棋力の向上と的確で安定した学習を可能にしたという。

ゼロの衝撃は、AI開発に人が培った専門知識を用いなかったことにある。これまでのAI開発では、人体の断層写真から病巣を突き止める医療解析の場合、実際の診断に使った膨大な写真データが必須だった。専門知識を必要としないAIの出現は、データが不足した分野でもAIが有効となる期待を抱かせる。「専門知識を自動的に学習するのはAIの理想形。ゼロの手法は世の中の諸問題を専門知識なしでも解決しうる可能性を示した」と、囲碁AIに詳しい電気通信大の伊藤毅志助教は言う。一方で、ルールが明確な囲碁と違って「現実社会で適合するのは難しいのではないか」とみるのは、AI関連の著書がある作家の小林雅一氏。「ビジネスでも単純に結果よければすべてよしではない。状況により相手を立てる必要もあるだろう。AIにはそうした人間感情は処理できない」

国内最強の囲碁AI「DeepZenGo」開発チームの加藤英樹代表は「ゼロはグーグルの巨大なリソースを利用して実現したソフト。理論的には以前からあった。その打ち方には人間が編みだしてきた定石も含まれ、むしろ人間の賢さが再評価されるのではないか」と話す。



FaceBookに面白い記事が載っていました。

広田徹:上の文での中で「一手0.4秒の速さで490万局の自己対戦を繰り返し、…」とありますが、「一手0.4秒」の意味がよく解りません。
大橋拓文:「一手を0.4秒」なので、1局を200手とすると1局を80秒で打つことになります。490万局打つためにマシンをたくさん用意して同時に何局も打てば打てるはずです。ちなみにコンピュータ同士だと平均1局300手はかかると思いますので、1局2分くらいかかるかもしれません。
広田徹:1局2分ほどかかるとすると「1秒に19局対局している」計算になります。するとマシンの台数は、120秒×19台=2280台稼働しているということになりますよね。
大橋拓文:その通りで、多くの囲碁AI開発者はマシンを2000台は使っていると試算しています。
広田徹:私は1台のマシンが1秒間に10数局の対局をしているのかと思っていました。一つの疑問が解けてすっきりしました。

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