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伊了初段「運よく入段できた」
【「週刊碁」2017年9月18日号 2017年9月11日発売】

2017年9月1日に初段になった日本棋院東京本院の伊了初段。特別対局室に姿を現した伊了初段はありありと緊張の様子を浮かべていた。なんだかぎこちないネクタイ姿が初々しい。これがプロとしてのデビュー戦なのだから無理もない。対局室にあらかじめ盤石や盤を清めるための手拭いが準備されているのを見て、伊初段は「プロの対局はこういうものですか」と感心顔を浮かべた。院生時代は手拭いは自前で盤石の準備や片付けは自分たちでやらなければいけないが、プロの対局は係が設営してくれる。武宮正樹九段と記録係を引き受けてくれた横塚力二段が着座して、そろそろ対局を始めようかという頃合いで伊初段は重大なことに気付いた。「時計が!?あの、時計はどうすれば…」。ここでいう時計とは対局時計のこと。かたわらに対局時計がないことに気付いて伊初段は大慌て。その様子を見て横塚二段は思わず微笑。「時間は僕が時計を見て記録するから大丈夫。消費時間が知りたいときはいつでも言ってくれれば記録用紙を見せるから」と優しく説明。伊初段は再び感心顔でうなずいた。盤石の準備や記録など、煩わしいことはやらずとも良い。対局にのみ集中できる環境を周囲がお膳立てしてくれる。これがプロの手合というものだ。

伊了初段のご両親はともに中国の方だが、伊了初段は日本生まれの日本育ち。小学1年生の時、碁好きの父の影響で碁を覚えた。3年生の時から洪清泉三段の道場に通って本格的に腕を磨き始める。中国の葛道場や韓国のヤンチョン道場にも長期間滞在していたことがある。そのあと、こども棋聖戦高学年の部で優勝するなど大会で好成績をあげるうちに次第にプロ棋士への道を志すようになったという。中学入学と同時に日本棋院の院生に。4年目となる今年、入段をきめることができた。はたから見ると順調にプロ入りを果たしたようだが、「今回がダメなら院生をやめようかと思っていた」と伊初段。「運よく入段できたという感じ」という。
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