最強囲碁AI アルファ碁解体新書 |
【2017年9月3日 毎日新聞東京朝刊「今週の本棚」】
『最強囲碁AI アルファ碁解体新書』=大槻知史・著(翔泳社・2808円)
神か悪魔か。分からないものを極論で片付ける前にすべきことは実像を知ることだろう。トップ棋士を降し、世界を驚嘆させた人工知能・アルファ碁とは、技術者の創意工夫で作り上げられた芸術的なコンピュータープログラムである。以上でも以下でもない。本書でアルファ碁の仕組み、出来上がるまでの過程を示されると、よく分かる。学生やエンジニアを読者に想定した解説書だが、分かりやすい図示を心がけており、ネイチャー誌に掲載されたアルファ碁の論文を読み解くのに苦闘した評者のような「私立文系」の専門外も、関心あれば読み進められる。AIにとって画像を認識するのと、囲碁の次の一手を考えるのが似ていることなど興味深い。
囲碁の強い人は何が優れているか。形勢判断の正確さ、対局の経験を生かす力などであり、アルファ碁は深層学習、強化学習などで形勢判断の正確さ、対局の経験を生かす力などの部分を磨き上げ、バランス良く組み合わせ、勝つという目的では人間をしのいだ。しかしAIは勝った理由を説明できず、明確なルール、目標のない分野は苦手だという。結論だけで人間は納得できない。それは我々の日々の実感ではないか。
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