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藤井フィーバーはすごいが、井山裕太も負けてはいない
【2017年7月5日 毎日新聞東京夕刊(金沢盛栄)】

お隣の将棋界が大騒ぎである。中学生棋士、藤井聡太四段が前人未到の29連勝を達成。連日のフィーバーで、29連勝をした翌日(6月27日)の一般紙、スポーツ紙のほとんどが1面を飾った。弊紙をみると、1面トップの上、社会面を左右に見開き、3面にも大きく展開した。羽生善治王位(46)と本因坊文裕(もんゆう)(28)=井山裕太九段=が7冠同時制覇(羽生1996年2月、文裕2016年4月)を遂げた時を大きく上回る報道量で、何とも度肝を抜かれた。その藤井フィーバーもようやく一段落した。7月2日に指された対局で敗れ、連勝がストップしたからだ。その藤井フィーバーもようやく一段落した。翌日の各紙は1面などで報道したが、これからは、徐々にトーンダウンしていくことだろう。将棋界の宝である藤井四段には、この“異常事態”に惑わされることなく、すくすくと育っていくことを願うばかりだ。

囲碁界で直近の大きな話題といえば、文裕による本因坊6連覇(6月16日)であろうか。21歳の若武者、本木克弥八段を4連勝で負かした力量は圧倒的だった。4冠から6冠に復帰し、さらに7冠を達成した時期を第1期の黄金時代とすれば、今期本因坊防衛以降を第2期の黄金時代といっていいだろう。防衛当日、他にビッグニュースが多かったためか、報道は寂しいものだった。例年にない小ささで、担当者の一人である私は心底がっかりしたものである。

ただ、暗い話題ばかりではない。ニュース価値としては藤井フィーバーを上回る快挙が、この秋にも実現する。囲碁界に精通している人ならぴんとくるだろう。文裕による、再度の7冠同時制覇である。文裕は現在、6冠(本因坊、棋聖、王座、天元、碁聖、十段)を保持。既に、碁聖をのぞく5つを防衛している。碁聖戦は山下敬吾九段との五番勝負真っただ中で、第1局を先勝。第2局は7月19日に打たれる。残る1冠は8月末から七番勝負が始まる名人戦。9人のリーグ戦で、文裕は6戦全勝。1敗者はおらず、残る2戦で1勝すればよく、挑戦は濃厚となっている。文裕はいつものように淡々と「目の前の一局に全力を尽くすのみ。その上でチャンスがあれば狙いたい」と語る。再度の7冠となれば、それこそ前人未到を超える偉業であろう。今の文裕なら実現できるし、今しかないとも感じる。
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