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AI研究加速へ日本棋院と電気通信大が提携
【2017年6月29日 産経新聞(伊藤洋一)】


コンピュータ囲碁に関する提携を結んだ日本棋院の團宏明理事長(右から3人目)と電気通信大の福田喬学長(右から4人目)。左端が電気通信大の伊藤毅志助教

公益財団法人の日本棋院(東京都千代田区)と電気通信大学(東京都調布市)は6月29日、「コンピュータ囲碁を用いた新たな相互技術交流」に関する5年間の提携を結んだ。プロ棋士と囲碁ソフト開発者が交流することで、囲碁と人工知能(AI)研究の発展を目指すという。両者は今年3月まで約5年間、「コンピュータ囲碁の健全な進歩とそれによる囲碁界の発展を目指す」として提携していた。近年のAIの急速な進歩により、社会活動にも大きな変化が起きようとしているため、囲碁ソフトの思考回路を一緒に分析することで、棋士の棋力アップとAI研究に役立てたい方針だ。電気通信大でこの日行われた調印式で、同大の福田喬学長は「ふたたび協定を結んだことで認知科学、情報通信工学研究の発展に寄与するものと期待できる」と語った。また、日本棋院の團宏明理事長は「かつては本を読んだり、師匠宅に住み込みで勉強したりして強くなっていったが、将棋の藤井聡太四段がそうであるように、囲碁でも若い棋士はソフトを利用して強くなっている。囲碁AIの研究は、棋士が強くなることや普及にも役立つのでは」と希望を込めた。

両者は5年間にわたり、囲碁ソフトとプロ棋士が対局する電聖戦を開催してきた。今年3月には、若手実力者の一力遼七段(20)が2種類のソフトと初めてハンディなしで対戦し、連敗。また5月には世界ナンバー1と称される柯潔九段(19)が、米グーグル傘下の企業が開発した「アルファ碁」に3戦全敗を喫している。「チェスや将棋、囲碁の知的ゲームでは、強いプロ棋士を超えるのがコンピューター技術者の目標。その意味では一つのステージを終えた」(同大エンターテイメントと認知科学研究ステーション代表の伊藤毅志助教)として、対局などには直接関わらないという。代わりに、囲碁ソフト開発者と若手棋士による研究会を随時、開催していくという。これまで常識とされていた手ではなく、新しい着手を選択し勝ってしまう囲碁AIのナゾの部分を、共同で解明していく。今後、シンポジウムなどで公表していく方向だ。伊藤助教は「(前回の提携から)5年でプロと互角に戦えるようになるとは思ってもみなかったが、AIを利用すれば人間の能力はまだまだ伸ばせる。人間と、人間を超えたコンピューターはどう共存していくかを考えるいい機会。(暴走の可能性がある)自動車の自動運転などにも応用できるはず」と、提携の意義を話した。“敵”のような存在だったソフト開発者を味方につけ、プロ棋士は復権できるか…。
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