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「囲碁の魅力」 年齢や性差「壁」超えて
【2021年9月22日(水) 河北新報「一力遼の一碁一会」より】
 今回は、囲碁が持つ魅力を「超越する四つの壁」という着眼点で紹介します。まずは「年齢」です。国内には500人近い棋士がいます。その中で最年長は94歳の杉内寿子(かずこ)八段、最年少は12歳の仲邑菫(なかむらすみれ)二段です。さまざまなプロの競技のうち、82歳もの年齢差があるのは囲碁だけでしょう。杉内八段の夫の故杉内雅男九段は97歳で逝去するまで生涯現役を貫き、80年もの長い間、棋士として活躍されました。95歳の時には15歳の若手と対局し、「80歳差対決」と注目を集めました。90代になっても常に最新型を取り入れ、囲碁の真理を追究される姿勢は棋士のかがみでした。次に「性別」です。他の競技でも男女でペアを組み試合を行うことはありますが、囲碁界のように同じ土俵で戦うのは極めて珍しいと言えます。従来は男女で差がありました。年々、女性トップのレベルは上がっており、最近では男性の一流棋士に勝つこともよくあります。トップ棋士の証明であるタイトル戦のリーグ入りも近い将来、実現する可能性が高いでしょう。三つ目は「国境」です。日本、中国、韓国、台湾といった盛んな地域に限らず、全世界に愛好家がいます。黒と白の石を交互に置くという非常にシンプルなルールの囲碁は、石が共通言語の役割を果たしているのです。国内で活躍する海外出身の棋士は数多くいます。東アジアのほか、米国やフィンランド、東南アジアから日本に来てプロになった例があり、国際化が進んでいる証しと言えるでしょう。最後は「視覚」の壁です。中学1年の岩崎晴都さんが今年4月、弱視として初めてプロ候補生の院生になりました。碁盤の線が立体になっていて、石を盤に固定できる「アイゴ」という用具があります。目が不自由な人のために作られ、岩崎さんはこれを用いて他の院生と対局しています。アイゴはアマの大会でも使用されており、視覚にハンディがあっても楽しむことができるのです。1年間続いた連載も、これが最終回です。このコーナーをきっかけに、囲碁の世界に興味を持っていただけたら光栄です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(囲碁棋士)


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