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山城宏九段、浸透流で棋院経営にも尽力
【2017年7月9日 毎日新聞東京朝刊(金沢盛栄)】

日本棋院東京本院所属の山城宏九段が6月12日、福井正明九段との対局に勝ち、公式戦通算1200勝(616敗7引き分け)を達成した。日本棋院、関西棋院合わせて史上8人目(日本棋院77人、関西棋院1人=結城聡九段)。58歳10カ月、入段から45年2カ月での快挙で、「まずは、45年も無事に打てたことに感謝。これからも、65歳の時に天元を獲得された師匠(島村俊廣九段)を目標に頑張っていきたい」と笑顔を見せた。

山口県下松市出身。小学1年の時、中部総本部の重鎮、島村九段が故郷を訪ねたのを機に、内弟子になった。「結婚する24歳まで、名古屋の先生宅に内弟子としてお世話になりました。内弟子の長さとしてはたぶん、最長不倒でしょう」 1972年、13歳で入段、85年に最高位の九段に上り詰めた。王冠戦(中部総本部限定棋戦)優勝155回、本因坊挑戦3度など、常に最前線で活躍してきた。

対局の傍ら、副理事長も務め、棋院の経営にも携わっている。「今年で5年になります。二足のわらじですが、最初の4年は経営の方に集中していました。昨年の夏、名古屋から東京に引っ越し、少し余裕ができた。AIの碁も勉強しています。でも成績は不満ですね。去年は初めて7連敗し、さすがにもう勝てないかと思いました」 副理事長を引き受けたのは、師匠の影響が大きい。「島村先生は、内弟子を育て、地元で囲碁クラブを経営、その上で副理事長もやられた。しかも、手合に勝って、タイトルまで取られた。その背中を見て育ちました」 日本経済同様、棋院の経営も厳しい。「将棋の藤井君(聡太四段)じゃないけれど、勝たないといけない。碁は日本でなく、世界が相手。世界戦で結果を出す。それが経営にもつながる。井山裕太本因坊を中心に、若手も頑張っていますが、課題も多く、まだまだこれからです」

囲碁人口減少の歯止めも大きな問題となっている。「普及の課題は三つ。まず、教育に囲碁を取り込む。幸いなことに大学の授業が増えており、30校以上あります。次に社会人への普及。囲碁を取り入れ、経営戦略に生かします。最後に、シニア。いずれにしても地道にやっていく以外ありません」 手厚く、丁寧に打ち進める棋風からついたニックネームが“山城浸透流”。「じわじわと堅固な岩にしみいり、砕いていくイメージかな。気に入っています」

記憶に残る一局として、本因坊戦七番勝負に初めて登場したシリーズの第1局をあげた。「28歳の年かな。第1局は大熱戦で、大接戦。負けはしましたが、手応えを感じ、“やれる”と自信がつきました」 今もトップ棋士として活躍する秘訣(ひけつ)は? 「若い頃の貯金が大きい。特に七番勝負はすごい経験でした。それと、対局時は、余計なことを考えずに集中することかな」。はにかみながらニッコリした。

通算1000勝達成棋士 (勝ち数、負け数は7月5日現在、日本棋院のみ)
棋士勝ち数負け数
二十五世本因坊治勲1506822
林海峯名誉天元1414907
小林光一名誉棋聖1378730
大竹英雄名誉碁聖1280804
加藤正夫名誉王座1254663
羽根泰正九段1225666
山城宏九段1201617
武宮正樹九段1174731
王立誠九段1169663
二十三世本因坊栄寿1116675
小林覚九段1113581
依田紀基九段1100572
二十四世本因坊秀芳1087677
片岡聡九段1060570
工藤紀夫九段1053671
王銘宛九段1043600
淡路修三九段1024619
石井邦生九段1013619
彦坂直人九段1006555



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