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一力遼「若い年代のファンの拡大につながっていけばいい」
【2017年5月18日 毎日新聞東京朝刊「若者フリーゾーン」聞き手・中村美奈子みなこ】

囲碁棋士 一力遼(いちりき・りょう)さん(19)
小学5年の4月に仙台市から上京し、都立中高一貫校の1年(13歳)の時にプロ入りしました。見聞を広めるため大学進学を選び、現在早稲田大学社会科学部2年です。来月で20歳になりますが、一昨年の公職選挙法改正で18歳で投票できるようになり、初めて投票した昨年の参院選では新聞などで情報収集しました。あの時と今の自分を比べても特に変わったことはなく、世界的な流れからみても、「成年を18歳とすること」に賛成です。

囲碁は主に中国や韓国が相手の国際棋戦があります。対局に影響することもあるので、アジアの情勢には関心を持っています。3月にAI(人工知能)と対局して2連敗しました。ここ1、2年のAIの急速な進歩を自分で感じてみたかったので、対局を引き受けたのですが、もはや人間が対等に対局するのは難しくなったと痛感しました。AIは大局観と判断の速さ、正確さが優れていて、人間が10分考えたい場面でも5秒で打ってきてペースを崩くずされます。また、今までの研究では良くないと思われた予想外の手が生きる場面もあり、今ではAIが打った手の研究も盛んに行われています。

指導のために碁を打ったり、局面を解説したり、囲碁の世界でAIが広く活躍する可能性もありますね。でもその中で、AIが強くなってきた今日において人間が囲碁を打つ意味は何か。それは人間らしい碁を見せることなのではないかと思います。対局に感情が絡からみ、思わぬミスや逆に思いもかけぬ良い手が出て、ドラマが生まれる。一手一手のぶつかり合い、白熱の戦いを見せられるのは、人間同士の対局だけではないでしょうか。囲碁ファンの多くは60代以上です。自分にできることは、対局を魅力あるものにし、タイトルを獲得して囲碁の魅力を知ってもらうこと。若い年代のファンの拡大につながっていけばいいと思っています。


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